Open Educationに関する“Opening up education”という書籍(出版はMIT Press、原著英語のみの公開)を紹介して頂いた。
http://mitpress.mit.edu/opening_up_education/
これは、飯吉透氏とビジェイ・クマール氏が27件もの実体験レポートを編集された形式で出版されている。スポンサーはカーネギー財団である。タイトルは副題を含めて、和意は“教育は開かれた:公開技術、公開コンテンツ、公開知識を通した教育の革新”と必ずしも、日本語として普段使い慣れている語彙ではないが、そんな意味があるとご理解頂ければ幸いである。
全体は以下の3章で構成され、それぞれ27件の個別のレポートが各章の趣意に合うように構成されている。
セクション I 公開教育技術
セクション II 公開教育のコンテンツ
セクションIII 公開教育に関する知識
英文量としてはA4サイズで、500ページもあり、読破するにはかなりな挑戦的な量である。
27編の中で第24番目の論文 (Learning Design: Sharing Pedagogical Know-How;デザインを学ぶ-教育工学的ノウ・ハウの共有)の内容にちょっと目を通した。驚いたことに文頭に公開教育で経験した“2つの成功と1つの失敗”と述べられていたことである。どんな成功と失敗があったのか気になって読み進めた。簡単に言うと、マネージメントシステムの開発と教育コンテンツを公開共有することは成功、しかし教育工学的ノウ・ハウを教える側の教諭間で共有するプロセスが欠如していたことが失敗と反省されていた。
1番目の成功はMoodle, Sakai, LRN, ATutor とか他の様々な創造的なコースマネジメントシステムを開発したことと運用出来たことと記されている。
2番目の成功はOpenCourseWare, MERLOT, ARIADNE, 他の様々な先駆的なコンテンツを自由に共有出来たという事である。
気になる、反省している失敗例は、実際のe-learningコースで、経験のある教師が提供している“教える”というプロセスをきちんと捉えていなかったこと。これまでの多くのe-learningは図書館に所蔵されているコンテンツと似ているだけで、本来e-learningの最大の特徴であった教室内の協調的学習経験とはなっていなかったと記されている。如何に教えるというプロセスが科学的に、工学的に捉える事が易しくないという事を暗示している。
参考までに27編のタイトルを挙げておく。
セクション I 公開教育技術
1 序論、公開教育技術:強烈に沸きあがった強い意識
2 公開教育技術の設計について
3 門は閉じられた、公開教育への技術と文化の障害
4 公開ソース(内容 コンテンツのこと)戦略は問題? iLabs プロジェクトから学んだこと
5 公開教育の結果の評価
6 収穫は大き過ぎたか? 教育で得られる沢山な“収穫”の構成
7 デジタル図書、学習グループと公開教育
8 公開教育における公開ソース(コンテンツ);期待と挑戦
セクション II 公開教育のコンテンツ
9 セクションIIの序論、公開教育コンテンツ;形を変えて教育へアクセスする(近づく)
10 公開教育リソースを通して教育の機会を広げる( 多くの人が参加できる)
11 グループベースの研究活動として、公開学習を創り上げた
12 MERLOTグループの経験から学んだこと:教育工学的コンテンツと研究戦略とを併用することにより、公開教育リソースの効果を拡大させる
13 なぜ、公開教育を利用したりそのユーザのことを理解しなければいけないのか
14 公開コースの資料:共有するという文化を形成する
15 Connecxionsの事例:公開教育へ移行するための挑戦と(参加できる)機会
16 2005-2012年の間の公開コース資料
17 イノベーションを通した教育の革新: 公開するということで教育・学習を変貌させることが出来るか?
セクションIII 公開教育に関する知識
18 セクションIIIの序論、公開教育知識: 教室の扉を開け放つ以上のこと
19 直接・生の要望: 公開(協調)理解へ向けた学習と教育の奨学制度
20 オープンスペースの真ん中で: 複数の階層のある公開教育グループを通した学びに関する知識の積み重ね
21 公開教育: 継続的で効果的な公開教育へのカギ
22 継続的な公開教育イノベーションのための技術で出来る知識の創出と共有の普及と紹介
23 システムの変化への足場
24 デザインを学ぶ: 教育工学的ノウ・ハウの共有
25 共通知識: 高等教育における公開性
26 何のために公開する? 振興組織のリーダーシップと変革の事例研究
27 公開知識へ向けて次に何をすべきか?