こんな日本的商いのちょっと古めかしいキーワードにしても、物やサービスを提供したいというシーズ型ビジネスと特定な物やサ―ビスが欲しいというニーズ市場型ビジネスが想定される。
メーカ(生産者)とエンドユーザ(時には消費者)を物流的に結び付けるのが、この日本的卸しと問屋の単純な役割として考えていいのだろうか。時には、実際は多くのケースで生産者や消費者は非常に弱い立場にある。
仲買人の言い値で生産者は安い値段で物を売り渡さざるを得ない時、消費者も問屋や小売店から言い値の高値で買わざるを得ない時もある。物流的には、卸しは規格商品をメーカから大量に仕入れて、それを小分けにして小売店、そして消費者(エンドユーザ)へ供給するという役目も果たしている。
現代のe-commerce(EC :通販業者)も商材を仕入れて、ネットでユーザの目を止めさせ、注文を瞬時に受けて、商売成立という事になる。小規模のネット通販では商品の独自企画は出来ないので、所謂メーカ、生産者の企画製品を、ウェブの上手い宣伝文句で、いかにユーザの心を擽る(くすぐる)算段に時間と資金を費やしている(デジタルマーケティング)のが現実の姿と思う。大規模ネット通販業者は、旧来の卸し・問屋の力量を出し、メーカー側に独自企画の製品開発を委託出来るケースもある。上手くいけば独自企画商品という差別化で売上倍増も期待できる。
昨今、ECや物流に関係なく、規模の大きい世界市場を想定し、品質や量産技術の工場で、物が大量に生産され、メーカー間の熾烈な生存競争の果てに、弱小企業が淘汰され、年間生産数が億を越えるような規模でも、メーカーが数社なんている業界もある。こういうケースはもはや卸しや問屋が入り込める世界でなく、メーカ主導型ビジネスとなる。
最近ではファブレスと言って、生産設備を持たない“メーカー”がいる。普通はそのような企業をメーカと思っている。物作りでなく、物やシステムの独自設計力があり、生産だけを他社に委託しているのである。実際には世の中に、こういう製品が多い。
最近、日本国内の各地で台湾以外の地で超精密な(2nm技術)半導体工場の建設ラッシュが続いている台湾のTSMCは世界一である。米国内にも進出し、昨今の東西対立の中、積極投資を続けているファブレスではない「顧客のメーカー」がある。 “メーカー”といったが、実は力のある卸し・問屋なのかもしれない。自社の企画製品・半導体チップは絶対市場で売れる、ユーザのニーズを満たしていると自負している。
こんな状況をひっくり返す最近の流れがある。卸しも問屋もいらない。エンドユーザが支配的なケースである。商売とは売買とイコールで有るのだろうか。否、中間の“メーカー”や問屋が介在しない世界である。ただし、一つ条件があって、エンドユーザは製品の消費規模(利用数量、台数)が極めて大きいことである。所謂大量購入、消費が出来る力量を備えたケースである。更に必要な製品の独自企画・設計力も備えているケースである。簡単に言うと、エンドユーザが自ら商品設計をして、大量に委託製造業者に発注して、自らがその商品を利用するのである。下記のサイトに、こんな事例があることを示す。
サイト情報; datacenterknowledge.com 2012/05/08/ 号
もう12年も前の事だが、今の地球上の人々の生活で、なくてはならないインターネットのジャイアント企業が建設し始めたDC(データセンター)のコアになる高性能のserver(スーパーコンに匹敵する能力、だが莫大な電力を必要とする)が一拠点に数万台も必要とする事に言及した。すなわち、オープン・コンピュートプロジェクトである。
これでお仕舞いと思ったが、よく考えると、受注している製造委託会社は、実は所謂メーカとエンドユーザの中間にいた“メーカー”や問屋がそれなりの長い期間で育て上げたものではなかったのかと。即ち卸しと問屋がインテリジェント化した形態ではもはや対抗できない業態に進化したのだろうか。参考にしたサイトの英文資料でも、サプライチェーンを shake up しているとある。これを恐ろしく震え立たせると解釈するか、前向きな意味でも業界の reorganize と考えると面白い。実際、shake up に reorganization という意味もあるようだ。
12年経った現在ではCHAT-GPT や人工知能AIというキーワードが多くの人達に知れ渡る状況にはなっているのだが、実はその中身の仕組みまで理解している方は極めて少数である。