ノン・コグニティブ・スキル 非認知能力

 日本語を理解する際に一番厄介なことは先人が所謂英語の発音をカタカナで表記したカタカナ外来語である。その理由は先人がそもそも適当な和訳漢字を見出せなくて、発音をそのまま表記したことで、難しさも醸し出しながら、本来の意味はと知りたい一般人を惑わせている。
 さて、以前プラズマという言葉について呟いた際の宿題として自らが自らに課した事(non-cognitive skill/ノン・コグニティブスキルの本意)に少し立ち入る。発端はノーベル賞受賞経済学者(James J. Herckman/ ジェームズ・ジョセフ・ヘックマン)が所謂学力、IQ値を英語ではcognitive ability と言い、それに対してnon-cognitive skill が子供たちの小さい時から育つ環境によって大きく異なり、大人になって豊かな生活(精神的にも経済的にも)を送れることを左右すると指摘した。そのジェームズ・ヘックマンは学力・IQ値を全否定したものではないが、翻訳の世界・業界が英語から日本語へその論理展開される際に、私が疑問に思ったことがあって、non-cognitive skill が非認知能力と和訳され、認知症の認知と混乱したことであった。その原英文ではconfidence and perseverance <自信や根気強さ >のようなこととされている。

 付け加えると我々日本人がいつ頃から認知という語句を使い出したのか定かでないが、私の短い経験では痴呆症を認知症と言い換えた比較的最近の出来事;平成十六年厚生労働省の痴呆を差別的でない用語で置き換える検討会が開かれ、最終的に認知症とした。
痴呆 から 認知症 認知障害 用語変更検討 平成十六年 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/s1224-17.html

 もう少し詳しい経緯を調べたのだが、非認知能力とは学力・IQ値を否定した意味ではなく、感情や情緒など精神的な範囲のことをいい、ジェームズ・ヘックマンが指摘してから、文科省の研究課題に取り上げられ著名な大学の先生方で検討された報告書(2017年)まで目を通させて頂いた。その報告書ではnon-cognitive skillを情緒的強みと言い換えている。さらに、最近の大手新聞のコラム記事「2022年1月13日読売新聞朝刊 p11 ニュースの門、memoより では、次のように <一学級の児童数が減った教育現場は、> 学力のほか、意欲や根気強さ、協調性といった非認知能力に対してどのような効果があるのかという課題が提起され、児童数が減ったクラスが即、非認知能力の育成に繋がるのか?という疑問が紹介されていた。

 実は私がこの独り言をまとめるに際して一番時間を割いたのが、心理学者アンジェラ リー ダックワース さん(Angela Lee Duckworth)の2013年TEDトーク(YouTubeで検索出来ます)で、子供の教育現場での観察・研究が進められ、子供が成し遂げた成功・成果は学力・IQ値に関係なくGRITだとの示したことである。

TEDxBlue – Angela Lee Duckworth, Ph.D – 10/18/09 – YouTube

 本寄稿を準備していた際に起きてしまった、もっと痛ましいのは令和4年1月15日の大学受験の第一ステップの共通テストの早朝に中部地域から都心へ移動し、某著名大学の入り口付近で受験生と老人に傷害を与え、近隣の駅での放火や在籍学校について騒がしたりした事件を起こした受験前の高二の生徒のnon-cognitive skillの醸成は忘れられ、周囲もcognitive abilityのみを求め、それだけに答えようとして無理をしていた高二の子供の心を爆発させたのでしょう。また、関西の女子大生が関東圏の著名私立大に再入学したいという意欲的な意思を持ちながら、同15日の共通テストでスマフォとSNSを使い、試験場外の第三者を通じて所謂カンニングを行い、メディアではそのスマフォを使ったカンニング方法の詳細は?と賑わせたが、その女子大生が自首して、犯人は誰かという事の決着は得た。しかし、医者になりたいという高二の子供と十九才の女子大生の心情、なぜそこまでの行動に追い込んでしまったのかという議論はメディアではされずに、新型コロナの第6波の感染者急増にテーマを替えてしまった。

 アンジェラさんの2013年TEDスピーチではnon-cognitive skill という英語は使われていないが、成功への鍵はGrit(Grit is passion and perseverance for very long-term goals.)であるとお話したが、非認知能力も非常に時間のかかる目標を達成するための情熱と根気強さと同じことです。そもそもGRITなる英語の意味は?で、アンジェラさんは再定義し、Guts(度胸):困難なことに立ち向かう能力、Resilience(復元力):失敗しても諦めずに続ける力、Initiative(自発性):自分で目標を見つける力、Tenacity(執念) :最後までやり遂げる力 の頭文字を取ったものです。GRITという言葉が広まって、和訳されて“グリット“という外来語になって皆さんに変に表面的だけの意味を受け入れて欲しくないというのが私の願いです。

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