平成28年5月7日、連休も終わろうとしている今日であるが、何気なく収納棚の奥に押し込まれている資料を取り出すと、これが以前青空文庫からプリントした寺田寅彦が記した“夏目漱石先生の追憶”だった。偶然であった。
文は長くもなく読み返すと、この追憶は寅彦が昭和7年12月に著したものであることが分かる。それはちょうど漱石が没してから16年後の事であった。今年から下がると84年も前のことになる。若い時に慕っていた師の没後16年になってから、著した追憶ということになる。おりしも、漱石が五高に英語の教師として松山から赴任してきた熊本である。先月震災にあい未だ余震がついているのも何かの縁と思うが、後年地震学者となった寺田寅彦が生徒としていて、熊本白川(藤崎神社近く)の漱石宅を訪れるところからこの追憶が始まっている。漱石夫妻は引越し好きで、この寅彦がある理由で伺うことになった家は五番目の内坪井の家に当たるそうである。
正岡子規、俳句の話や漱石の作品に登場してくる役が漱石の周辺でいる知り合いであるという話題は別にして、再読して是非ご紹介したいことを示す。
寅彦は、漱石先生が“文学の科学的研究方法”という大きなテーマを持っていたと想像していること、
寅彦は、漱石先生から、“自然の美しさを自分自身の目で発見する事、人間の心の中で真なるものと偽なるものとを見分け、真なるものを愛し偽なるものを憎むべき事”を教えられたとある。
記念展示会なども企画されている。ご参考までに。
http://www.kanabun.or.jp/exhibition/4344/