気になること、LとR

昨日(2008年6月30日)、電車の中である本のページを読んでいて、気になったことがあった。それは、ハリスの日本滞在記(中)、岩波文庫 の1857年1月12日(月曜日)に、次のような日本語の発音に関する彼の詳細な観察が述べられていたことである。

「日本人はLという字を発音することが出来ずに、Rの字をもって代用している。これはシナ人の場合と全く反対である。シナ人はRを明瞭に発音することが出来ず、Lを持ってそれの代用をしている。それ故にシナ人はrice という代わりに、lice と発音する。これは日本人がシナ人と同語系の国民ではないという他の多くの証明に、さらに証明を加えるものであろう。」

さらに、この後に、日本語の“の”の使い方は英語の“of”で、これは南方諸島の no の使い方と同じであるとも書かれている。ハリスは、日本民族は南方系ではないかと考えたのかもしれない。

ハリスは言語学者ではないが、日本語の(いろは)“あいうえお“を欧米式発音でアルファベットに書き下している。そのラ行、”ラリルレロ“は、ハリスが聞いたとおり、RとLが混在して書かれている。私の2008年05月24日の日記を参考にご覧頂きたい。

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先日、ハリスの通訳ヒュースケンの日本人下僕、西山助蔵さんの話をした。 彼は初めて手書きの和英辞典を作成した。似た続きの話があって、ハリスは日本語を学ぶために、あいうえお50音の 和英対照表を作成した。これの対照表が、ペリー・ハリスの展示会で展示されていたのである。ハリスは語学が堪能で、欧米系言語を複数操れると書かれている。 今、あいうえお50音といったが、本当は”いろは対照表”と書かれている。この“あいうえお対照表”を写真として添付したいが、版権上出来ないので、ハリスが学長をしていたニューヨーク市立大学のライブラリーをリンクしておく。 驚くことなかれ、デジタルアーカイブとして公開されている。

http://www.ccny.cuny.edu/library/exhibitions/harris/harris_eight.html

何が言いたいかを先に言ってしまうと、今我々が使っているローマ字が、 今の日本人が世界で一番英語が下手な民族であるといわれている根源を作ったのではないかと考えたのである。実際のハリスの対照表では、彼が自分の耳で聞いて、生の英語のどの発声に近いかを書き残したのである。(残念なことに写真から”お”の列が判明できない)

あ  い  う え お

ah!  e  oo  a

か  き  く け こ

kah!  kee  koo  k

さ  し  す  せ  そ

sah  see  sue  say

た  ち  つ  て と

tah  ti  tuo  tay

な  に   ぬ   ね の

nah  nee  noo  nay

は  ひ   ふ  へ ほ

hah  he  who  hay

ま   み  む  め  も

mah  mee  moo  may

や  い  ゆ   え よ

yah  ye  you  yea

ら   り  る  れ  ろ

Rah!  ree  rue  ray

Or lah! lee  les   lay

わ  ゐ  う  ゑ  を

“あ“の発音などは、ah!で感嘆符まで入れて書かれています。 ”あ”でなく、“あはー“と少し抜けた音だったのかもしれない。 ハリスも“ら”行は、rまたはlを区別できていない。 欧米人が聞いた日本語の“ら行“も微妙だったのだろうと思う。

“け”などは子音のkだけで母音を入れていない。そのくらい、撥音だったのだろう。 わ行について、アルファベットの注釈を入れていない。理由は分からないが、聞き取れなかったのか、普通話すときに、稀にしか使わなかったのか不明である。(日記終わり)

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このような生の英語発音で”ローマ字”式に50音を日本人が学べば英語がもっと上手かったかもしれない。私は別な見方をしている、今の日本人はRを聞き分けられないとよく言われるが、古い本来の日本語のラ行はRでもないLでもない発音だったのではないかと考えている。ちなみに、万葉仮名のラ行の漢字は以下のように当てられており、多様であり、当時の正確な発音は分からないが、そう単純な事だけではなかったように推測される。

ら: 良 浪 郎 楽 羅 等

り: 里 理 利 梨 隣 入 煎

る: 留 流 類

れ: 礼 列 例 烈 連

ろ: 路 漏 呂 侶

(Wikipedia より)